角膜(臓器)移植

角膜移植とは

角膜移植とは角膜とは、いわゆる黒目の部分のことで、眼球において光を採り入れる入り口の働きをする透明な膜で、角膜と水晶体をあわせてピントを合わせる役割も果たしています。

この角膜が病気や外傷などによって本来の透明性を失い、濁ったり傷ついたりしてしまうと光が通りにくくなり、視力が大幅に低下し、時には失明に至ることもあります。

投薬や手術などで治療ができず、濁りや傷が永続するような状態であるときには、角膜移植が唯一の治療法となります。

角膜移植は濁ってしまった角膜を切除し、透明な角膜を移植する手術です。移植する角膜はアイバンクという献体で提供された角膜を保存している組織から、患者さんそれぞれに適応するタイプのものを選んで使用します。これをドナー角膜といいます。

日本でも50組織以上のアイバンクが存在していますが、献体数がまったく不足しており、国内のアイバンクだけでは、手術が必要になってから2年も3年も待たなければならないような状態です。

この状況を打破するため、角膜の海外からの輸入も認められてきました。当院では眼科医療の先進国であるアメリカのアイバンクからドナー角膜を輸入していますので、手術の希望日に角膜を用意することが可能です。

角膜移植の対象となる疾患はさまざまですが、最近多いのは、角膜内皮細胞が加齢などを原因として減少し、角膜内部に水がたまり浮腫と混濁が生じる水疱性角膜症や、角膜が円錐形に変型して視力障害をおこす円錐角膜などです。

適応疾患

角膜移植の対象となる疾患は主に以下のようなものです。

水疱性角膜症

角膜の裏側には、角膜内に溜まる水をくみ出すポンプのような働きをしている角膜内皮細胞があります。加齢などを原因としてこの細胞が減少してしまうと、内部の水が正常にくみだされなくなり、角膜が水ぶくれになってしまいます。そうなると、激しいむくみがおこり、また透明度も失われて視力に大きな障害がおこります。
加齢の他には緑内障の手術などを原因として起こることもあります。
視力回復のためには角膜移植が必要となります。

角膜実質炎

角膜の中身である角膜実質に炎症がおこり、濁りを生じてしまった場合も角膜移植の対象となります。
炎症を起こす原因としては、幼少期に麻疹(はしか)やトラコーマなどにかかった場合、細菌や真菌による感染症が目におこった場合などのほか、角膜ヘルペスの治療後に混濁がおきることもあります。

円錐角膜

角膜の中央部が薄くなり、変型して前方に突出してくる変形性の疾患です。中程度までならハードコンタクトレンズの装用や各種の治療法がありますが、重度になった場合角膜移植の対象となります。ただし、最新の治療法によって角膜移植にまで至るケースがやや減ってきているといわれています。

角膜移植の種類

角膜は5層の膜からできています。そのどの部分を切除し移植を行うかによって角膜移植手術にも何種類かの方法があります。

全層角膜移植術(PKP)

角膜すべてを移植する方法です。角膜を切除し、患者さんの角膜にみあった大きさのドナー角膜を切除部におきかえ、縫合します。縫合は一針一針で糸を結ぶ方法と1本の糸で角膜全体を縫い付ける方法があります。
この術式は長い歴史をもっており、一般的な方法であるため、技術として定着しており安定しています。一方で、内皮層で拒絶反応を起こす可能性や、乱視が出てしまう可能性があります。

表層角膜移植術(LKP)

角膜の外側にあたる上皮層と実質層の途中までを切除しドナー角膜ととりかえる術式です。患者さん自身の内皮層を温存できるため、拒絶反応の可能性を低減できます。一方で、実質層の接合面にわずかなに混濁が残る可能性があります。

深層層状角膜移植術(DALK)

角膜上皮層と実質層のすべてを切除し、ドナー角膜ととりかえる術式です。内皮層の組織がしっかりと残っている患者さんに適応します。
この方式も自身の内皮層を温存できるため、内皮層型の拒絶反応の可能性が低減しますが、実質層の接合部にわずかな混濁が残る可能性があります。

角膜輪部移植(LT)

角膜上皮は角膜の内部を細菌などから護る大切な働きをしている部分です。この上皮の細胞を作り出して供給しているのが角膜と結膜の境目にある角膜輪部です。角膜輪部の働きが弱くなると、角膜上皮の細胞が新しく供給されにくくなり、角膜にさまざまな症状を引き起こします。輪部が機能不全になったときに行われるのがドナー角膜から輪部を移植するこの術式です。輪部の機能不全によって結膜が侵入したり、未分化の細胞が角膜上皮に入り込んだりすることを防ぐことができます。

角膜内皮移植(DSAEK/DMEK)

角膜の一番内部にある内皮層だけに疾患がおきている場合に適応する術式で、内皮層から実質層の一部までを移植する場合がDSAEK、内皮層だけを移植する場合をDMEKといいます。
目の表面に小さな孔をあけてそこから摘出する内皮層などをかきだし、ドナー角膜の内皮層部分を挿入します。術中に眼内に挿入したガスの力を借りて術部を定着させるため、縫合が不要で、目に乱視を残さないというメリットがあります。
ただし、ガスの圧力で定着するまでの間、上向きのままの姿勢を保つ必要があります。
また、内皮層型の拒絶反応を起こす可能性を含んで、移植した内皮層が定着しない場合があります。

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